2005年4月アーカイブ

#099 圧勝カウガール

資源回収に出すために、空のペットボトルを洗っていた。

ペットボトルの中を水洗いし、洗った水を捨てる。このとき、ペットボトルを振るように回転させながら水を捨てると、より早く水を抜けるのだ。
僕は得意気に「コレ、回転させながら捨てると早く捨てられるんだよね」と彼女に言った。カウガールのことである、こんな高尚なことは知りえないだろう。

「ああ、知ってる」。え、あ、うん、そうだよね、知ってるよね。

得意気に、しかもやや上から言ったことを僕は猛烈に恥じる。全身を駆け巡るやっちまった感。
さらに彼女は続ける。

「主婦の世界ではほとんど常識だよね。一升ビンでよくやる(?)」

一升ビンでよくやるらしい。
それよりあなた、主婦じゃなくて大学生ですよね。

 

#098 type ; CHOKKA

職場のトイレについてであるが、個人ブースの水流が激しい。

愚かなことに、僕がこのトイレの水流の激しさに気づいたのは利用し始めてしばらく経ってからなのだが、水流の激しさが僕の琴線にやや触れるのである。
イメージしやすく解説すると、レバーをひねると便器(洋式)の水がたまっている部分の底面がパカッと開き、水流が汚物もろとも落下していくのである。このタイプを仮に「直下型」としよう。
なんというか、この便器は実は潔癖症であるんじゃないのかというほどに、汚物を猛烈な勢いで便器から消し去る。汚物を嫌悪する便器。根暗な漫才師。
また、直下型なので音もスゴイ。地鳴りに近しい。

同期に「ウチの会社のトイレって、テンション高くない?」と聞いたら、「ああ、ビルの高いところにあるからじゃない?」とそっけなく言われた。
おいおいカウボーイ、もっと個人ブースに思いを馳せてくれよ。そういう物理的な理由じゃ解明できないだろう。

僕は職場のトイレが直下型であることを宣教し、同意を求めていこうと思う。

ちなみにお小水の方の便器はというと、数分間隔で自動的に便器を洗浄するタイプである。こちらとのギャップも捨てがたい。

 

#097 花粉SHOW

今ごろになって、花粉の猛威に辟易している。

テレビ等の花粉対策情報もひと段落した4月中旬過ぎたいま、くしゃみを連発している僕がいる。彼女がハナミズをズルズルしているのを見て、「僕は花粉症じゃなくてヨカッタなぁ」的なことをつぶやいていたのだが、この体たらくである。
とにかく、くしゃみが人智を超えた回数、出るのだ。もうくしゃみのクオリティも下がり、初期のころは「ハクシャン!」と鳴らしていたものが、過渡期の今では「テン!」である。解りづらいか。

連発されるくしゃみに対して大概にしてくれと思っていた矢先、くしゃみをしてハナをかんだら、ハナの穴からい草が出てきた。畳のい草だ。
なんというか、そんなミラクルは要らないのだよ。

どうせミラクルを起こすなら、ヒノキの木をすべて一瞬でサクラの木にするとか、あるいはくしゃみをするたびに口座の残高が4兆円くらいずつ増えるとか、そういう機転を利かせていただきたい。
「ハナからい草」ってなんだ。今日び嘉門達夫でも歌わない。ちょっと斬新すぎるだろう。

しかしだ。例年は花粉に対して素だったのだが、今年はハナからい草である。
このペースなら、来年あたりにはハナから4兆円くらい出てこないだろうか。それなら「オレっちマジ、花粉に ZOKKON LOVE 」と高らかに叫べるのだが。
花粉サイドもただ空中を浮遊するだけではなく、植物の威厳にかけて考えていただきたい。

 

おカネ持ちだったアサクラさん(仮名)。彼女の家に行ったときは、その家の大きさに度肝を抜かれた。小学生のことである。

立派な門構え。さながら衆議院議員を6期くらい務めた人間の家である。
その門をくぐると、家までの石畳が続く。玄関だけで6畳くらいあったと思う。

まあ、小学生のころの記憶であるから、実際はもう少し小さかったかも解らない。だが、かなり大きな敷地を持つ家であったことは、確かである。
なぜ、そんなことが言えるのか。それは、母屋から離れ(都内なのに「離れ」という概念があるのもスゴイが)に向かう途中に、アサクラさん(仮名)が発したひと言に集約されていた。

「あっその辺、落とし穴がふたつくらい掘ってあるから気をつけてね」。
あなた、一般的な大きさの家に、落とし穴がございますか。それもふたつくらい。

庭にふたつくらい落とし穴がある家。どれだけアスレチックなんだ。
しかも「その辺にふたつくらい」。不確定要素が多すぎる。なんだかワクワクしてくる気持ちを抑えきれない。

しかしその注意もむなしく、一緒に行ったタカハタ君(仮名)は、「ぅわあ!」という声と同時に、落とし穴に片足がハマっていた。案の定、である。
泥だらけの足。ワクワクする気持ちもその「汚れた足」という現実を直視して、すぐさま萎えた。単純にびっくりするし。

とにかく、「落とし穴があるかないか」。それが、豪邸か否かを判定する僕の基準である。

 

#095 カーテン最重要論

新居に越してからだいぶ経つが、いまだに部屋にカーテンがない。

部屋の窓がすべてすりガラスであるためダイレクトに光を透過せず、そのため部屋を公共に丸出ししてもいないので、カーテンの購入を先送りにしていた。
それに追い打ちをかけるかのように、カーテンは意外と高い。あんな布切れに、5ケタの大金をはたけはしない。

数々の事象が「カーテンのある生活」の障壁となった。よっていまだに、部屋にカーテンはない。

でも、カーテンって重要なんだね。僕、知らなかったんだ。

昼は、日光がこれでもかと言わんばかりに室内を照射する。暑い。
すりガラスだろうが、その「すり」の防御力は微々たるものだったのである。ラスボスに「おなべのふた」を装備して挑む勇者を想像していただきたい。

夜は、容赦なく室内の温度を奪う。底冷えという言葉のリアルさ。
ベッドが窓際に置かれてあるため、就寝時の寒さは人智を超えている。この時点で「おなべのふた」は、もう粉々である。

そんな体験をしてから、街を歩いても「あ、この家カーテンある。いいな...」と思うようになってしまった。
しかも、驚くべきことにあらゆる家のほぼすべての窓に、カーテンがあるのだ。なんということ。僕はあと何百回、「あ、この家カーテンある。いいな...」と思えばいいのか。

 

会社で、新入社員を対象とした健康診断が行われた。
採血の際にナチュラルに魂まで取られたんじゃないか的な感覚に陥ったが、それよりも問題はレントゲンのときである。ていうか本当に魂が取られればよかったんじゃないのか。

研修時に少し仲良くなったワタナベ君(仮名)と、健康診断の各ブースを回る。次はレントゲン撮影である。
レントゲン撮影用のクルマの中に入り、順番を待つ。僕らの前に、誰かがレントゲン写真を撮影している。
「ピローン」。撮影の瞬間、ちょっとファニーなサウンドが車内にこだました。そのサウンドがやや面白いなあと思っていたら。

「やってることは重いのに、音は軽いんやなあ...」。
ワタナベ君(仮名)、その気持ち解るよ。

「ピローン」というファニーなサウンドを背景に、僕らは微少に被曝しているのである。そのサウンドはないだろう、カウボーイ放射線技師よ。

 

#093 偉大なる我が親

実家でごはんを食べていた。

母さんがおもむろに「そういやアンタ、おカネないんでしょ?」と僕に告げながら立ち上がり、奥の部屋へと消えていった。
そうなのだ。ひとり暮らしはべらぼうにカネがかかるのだ。そんな僕に金銭を与えるとは、本当にありがたい。
あなたは神ですか。すると僕は、神の子ですか。

母さんは一万円札を片手に再び現れ、それを僕に渡した。菩薩の登場である。もう、宗教観もごっちゃになった。
「3月分のバイトの給料が入るまで、一万円あれば足りるでしょ?」。一万円はありがたい、ただ期日まではあと10日超。一万円ではどうだろうか。

僕はそんなことを脳裏に去来させながら、「う~ん」と難色を示してみた。そして「足りるかなあ」とダメ押しのひと言。
すると母さんは「そんなにたくさんおカネあげて、落としちゃったらどうするの!?」と、ワリと真顔で言ってきた。

今年で23歳になる成人男性に言う言葉だろうか。

社会人にもなって、リアルおこづかいの風情である。横から父さんも「なくなったらまたもらいに来い」と、温かさに満ち満ちた言葉。コドモ扱いに拍車がかかる。
だが、金銭を与えられている身なのだ。まったくもって贅沢を言う権利がない。ただただ、菩薩とアッラーの福音を前に、ひれ伏すばかりである。

彼女にその話をしたら、「いつまで経っても扱いが10歳児だね」との、核心を突いた指摘。コレには読者の皆さんも、うなずくばかりだろう。

 

#092 まんいんでんしゃ

今年度から社会人という歯車になるようで、入社式とかいうのに出席してきた。

僕の会社は同期が100人くらいいる、ワリと規模の大きな会社らしい。そのあたりは入社式に出て初めて知った部分であることも否めない。
昼食には弁当も出た。「なんとか」というキチンとした弁当屋の弁当で、それはもうおいしかった。
おいしかったのだが、僕は大量に弁当を残した。なぜか。

おいおい、まだ11時じゃないかカウボーイたちよ。

お昼の時間にはやや早い時間。だが他の同期たちはおいしいおいしいと、普通にもりもり食べていたのでデリカシーに欠けている。
僕はやや早い時間に出された弁当にただ「 No! 」と言い、しかしながら弁当屋には「せっかく作っていただいたのにすいませんでした」という申し訳ない気持ちを表明しつつ、そっと弁当のフタを閉じた。

そうである。
イエスマンばかりのこの会社に旋風を巻き起こしてやると心に誓い、僕は一緒に出された『お~い お茶』を飲み干したのである。

ちなみに旋風とは、辞書的には放屁という言葉に近しい。

 

東京異常階段 について

■ 作者:
 文豪きどり
 松岡
 1982/05/29 -
 好きな食べ物は屋台の焼きそば
■ 概要:
 □ 異常階段:
 東京近郊に存在する たぐいまれな階段を紹介
 □ column - TokyoShortSight:
 東京に住むいち人間として近視眼的にモノを見て、そのことについて書いてます
■ メール:
 matsuoka@ijo-kaidan.net

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